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Bosco Verticale-1 ミラノ再開発「垂直の森」

<画像転載禁止、ご理解ください>
A Milano nasce un Bosco Verticale ミラノに「垂直の森」が誕生!

ネット記事などで目にされた方も多いと思います。
マルモ出版No.94の巻頭特集ヨーロッパのアーバンデザインの中でも紹介されました。
HPより抜粋させて頂いています。
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建築家ステファノ・ボエリ氏率いるStefano Boeri Architettiのデザインによる2連の高層レジデンスですが、その名の通り、緑に包まれた塔のような建物です。
今回はこの設計に対する緑のコンサルティング業務を請けたLaura Gatti氏に話を聞くことが出来ました。
取材記事を数回に分けてご紹介します。

STUDIO LAURA GATTI
http://www.lauragatti.it/

ラウラ・ガッティ氏はミラノで活躍するランドスケープアーキテクトです。個人邸から公共施設、都市計画、コンサル業務と幅広い視野で仕事をこなしています。現在はミラノ大学で教鞭も取るなど、大忙しの日々の中、私のインタビューに時間を割いて下さいました。この場を借りてお礼を伝えたいと思います。
彼女はピアンテマーティ造園事務所(私の懇意にしている事務所としてブログでも何度もご紹介してきました)のフランチェスコ氏の幼少からの友人であり、垂直の森について話を聞きたいと繋いでもらいました。
いつもながら彼の人脈に大変感謝しています。

■Porta Nuova(ポルタ・ヌオヴァ地区)とは?
垂直の森の敷地であるポルタ・ヌオヴァ地区はミラノ中央駅からも近く、ガリバルディ駅(イタロの発着駅としてモダンな装いになった駅)に接する地区です。ドゥオモのあるチェントロ地区からも徒歩5分という近さです。
起案は50年近く前、住民の反対や資金調達、いろいろな問題を抱えながら長い年月をかけて完成に向かっている再開発事業エリア(約29ha)です。ミラノの郊外でも大きな再開発が行われてきていますが、こんなに歴史的中心街区に近い場所は紆余曲折あるのが当然でしょう。2012年完成を目指したはずですが、既に2014年ですね。
今はとにかく来年のEXPO MILANO 2015までに終われば!という目標となっているようです。
同地区は29haのうち、歩行者使用エリアが16haとなっており、緑のスペースもかなりの広さ、「木々の図書館」とHP内で名づけられていました。それだけ多くの植物を植えているということですね。
①Porta Nuova Galibardi、②Porta Nuova Varesine、③Porta Nuova Isoraと、大きく3つのゾーンに分かれており、Bosco Verticale(垂直の森)は3番目のPorta Nuova Isoraゾーンに建てられています。110mと70ⅿの高層がツインとなりそれぞれ26階、18階のレジデンスです。

ポルタ・ヌオヴァ地区のHP
http://www.porta-nuova.com/
ツインレジデンスのHP
http://www.residenzeportanuova.com/

■Bosco Verticale(垂直の森)
ラウラ氏はEmanuela Borio(エマヌエラ ボリオ氏)と共に、緑化に関わるコンサルティングを行ってきました。
2006年に建築設計がスタートし、2008年には建築緑化計画がはじまりました。その後2010年に、建築立面の詳細デザインが進むとともに、植栽計画を進め、ナーサリーで樹種の選択に入りました。ここから2年間、Como(コモ市)にあるナーサリーにて使用樹種を根巻して仮植え保存していました。高層に順応する樹種を選び、根が暴れないように仕立てながら管理を行い、植樹時期まで待機していました。

ツインレジデンスを覆う緑の数は約20,000本、うち高中木は約700本(MAX 8.0m)、低灌木類8000本強、地被11,000ポット強、数字では想像できませんが100種類以上の植物が約10,000㎡の面を包んでいます。それらを支えるプランターも研究を重ね軽量かつ頑丈、高層のためのオリジナルシステムです。

2012年より数回に分けて植樹をしていきます。最初は地上に近い階より3層分ずつ高木類の施工です。
<2012年4-6月>
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次の3層分に移ります
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高層部への植え込みは迫力ですね
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ラウラ・ガッティ氏
「ステファノ・ボエリ氏による初期構想は21世紀の都市における緑の実験として位置づけられました。この建物はLEED認証を受けてグリーンビルディングと名乗ることができます。高層におけるツリープランターシステムは最先端の素材、技術によって構築されたもので、建物が消費するエネルギーを30%削減でき、都市の空気汚染から建物を保護します。生物多様性の向上が期待されます。私にとっては人生初の“植物をメインに考えた建築計画”に出会えたことを嬉しく思います。
建築と緑の融合を構築することは、都市部の生活環境向上にかかるエネルギーコストの削減に大きく貢献する手法の一つです。いわゆる建物緑化、屋根緑化は徐々に贅沢の象徴としての緑から都市部の生活環境の改善、向上のための緑の手法として形を変えながら進化してきました。これに従い、今後もあらゆる可能性を模索し、屋根や屋上、壁、中庭、道路や広場なども含めた人工物への緑化を推進していく必要があると感じています。」


※LEED (Leadership in Energy and Environmental Design)
U.S Green building council(米国グリーンビルディング協会)による緑の建物に与えられる認証です。立地、水やエネルギー、資材や資源を有効的に使い、汚染、環境破壊削減、居住者やビルの中にいる人の健康と生産性を高め、環境や人間の体への負荷を減らす工夫をした建築に与えられます。立地選定から設計、建設、運営、改築、解体に至るまで、環境と資源に配慮した建物であるか、多くの項目毎に点数が加算されます。環境、エネルギー関連の他、デザイン性や教育や啓蒙などの項目もあります。


2012年に地上からスタートし、2013年にほぼ全階(最上階を含む上階から3層分は除く)、2014年現在、残すところの落葉樹や多年草植物の植栽工事のみとなっています。

<2013年夏>
建築ファサードの全貌も、緑量も見えてきました。
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<2013年12月>
南側に植えた落葉樹の姿です。東西南北それぞれの方角にあった植栽計画を施したとのことですので、今後のメンテナンス方法などもあわせ、計画コンセプトを取材中です。
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◎プロジェクトスタート時期のことをお聞かせください
ミラノは幸運なことに、国内では珍しく風が少ない街ですので、屋上や屋根緑化、人工地盤上の樹木に適しているのです。ただ私はプロジェクトの依頼を受けてからミラノ市内の事例を探して歩きましたが、計画は数えきれないほどあるのですが、施工に至ったものがものすごく少ない!だから、このプロジェクトが施工されることが本当に貴重な経験でした。
高層部にかなり大きな樹木を植える計画が進み、通常の屋上緑化工法では困難なことが予想されました。それは構造的なことだけではありません。“植物をメインに考えた建築計画”を進める中で一つ一つ新たな問題を検討し、解決してきました。


◎緑のコンサルティングの具体的内容を教えてください
ランドスケープ全体のコンサルとして動きました。高層に樹木を植えるプランターなど、これまでにありませんでしたので、特殊な箱のサイズ設定や製作からスタートしました。根鉢の基盤、構造の研究と同時に植栽計画に基づいた樹木や植物を施工2年前(2010年)にコモ市のナーサリーで選び、最初の見積項目に乗せて契約を交わしました。プランターシステムとして、樹木、土壌、プランター、アンカー全てを含んでいます。またマイアミ大学とミラノ工科大学の共同風洞実験を行いデータ解析も進めてきました。風と樹木、システムプランターの機能を知る重要な作業でした。

<2014年春>
先月の写真を送って頂きました。花咲く垂直の森、植えてからが本当のスタート!です。
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何年にも渡る計画、コンサルとして植物そのものだけでなく、都市建築への環境、植物が生きる環境の融合を目指した「垂直の森」、竣工は目の前まで来ています。

次回は植栽選択やそのコンセプト、ナーサリーとのやり取りなどをご紹介したいと思います。

La ringrazio molto per aiutarmi l'aticolo.