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★- Il rapporto con le sculture - A regola d’arte 完璧といえる彫刻と庭の関係 ★

前回ご紹介したAnna Scaravella氏の作品の紹介第二弾です。

Piacenza(ピアツェンツィア)とParma(パルマ)の中間ほどにあるFontana Fredda(フォンターナ フレッダ地区)のCadeo(カデオ)という小さな町の個人邸です。
家を設計したPiacenza在住の建築家より紹介を受けて、この仕事に携わりました。
クライアントはBob Wilson(Robert S. Wilson)の彫刻を収集しており、その作品を庭の中に点在させたいご意向でした。
Bob Wilson氏の作品は主にアルミニウム製の彫像、人物等身大のもので、頭部が動物(狼、鹿、兎など)、色使いも個性的です。

<彼女の作品集より抜粋>

Il paesaggio(風景)
別荘は農村地に建てられた60-70年代の建築で、自然に囲まれた緑と水が豊かな川に近い平地にある。道端に車を乗り捨て、数メートル歩けば、広がる緑の美しさ、静寂と水流の音、光を浴びてキラキラ輝く岩石が目に飛び込んでくる。その先にニンファ(妖精)の姿が。フォンターナ フレッダはそんな美しい土地である。
敷地は道路と川に挟まれた三角形、約5000㎡、川沿いにはヤナギやポプラ、ハンノキなど水辺の植物群が生い茂る。
別荘はVila Favorita(最愛の別荘)と名付けられた。
別荘を包む庭の中で起こっていること、それは彫刻と庭の関係性、自然と人工のコントラスト、違和感、緊張感、難しいバランスが面白い。ふたつの関係性を考える。ひとつは溢れる自然、樹木や植物、水流を好む既存の緑と計画された緑が共存する。もうひとつはその中に入りこむ都市的な要素・・・。
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Il giardino(庭)
Bob Wilson(彫刻家:ボブ・ウィルソン)氏の作品がデザインのメインである。彼は70年代のアバンギャルド芸術家として、才能を開花した人物である。
「空間も時間もそこに存在しない、どちらも同じことである。手のひらの上で見るならばポートレート、遠くに眺めるならば風景の一部となる。完成された光こそが空間となる。」と言っている。
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自然と彫刻、それらを包み込む光と影の明暗の差や境界線を非常に大事にしながら配置を決めた。
別荘から自然を見る、境界はなく空まで続く。光や影のラインがその場その場の分かれ目を作り出す。
芝生に落ちる影、川沿いの木々の影など・・・デザイン上の線を描く必要はない。

庭内の樹木は主に自生種、ポプラ、ヨーロッパナラ、、ヤナギ、ハンノキを植えた。
デザイン的にポイントとなる庭の中央は、芝生面を斜めに切った細長いプール、プールを横切るように列植した桑の木が場に個性を与えている。敷地内の塔の上から見ると、芝生にクロスした「X」が見える。この中を彫刻たちが歩き回っているような雰囲気だ。
桑の木はこの地方でよく見られ、特に農家の私道や並木道として列植えされてきた。農家を飢餓から救うために養蚕が大きく発展した時代である。
(養蚕の発展については過去のブログでも少し触れています:La Casa Colonica 農家
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道路と別荘の間にスクリーン的な緑として、ジャパニーズスタイルと名付けた場所がありました。
彼女の想う和のテイストとして、日本産のモミジとササ類の群植、段々に造られた流れをデザインしています。
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プロジェクトについて、彼女にお話を伺いました。

「アートは庭の中で動いています。これまでの歴史ある彫刻は庭の中で静かに佇み、庭は彫刻の美しさを見せる場でした。あ、ボマルツィオの庭園は違いますが・・・。私が考える現代アートとしての彫刻は庭の中で動き、ちょっと怖さとか面白さ、不思議さを感じるものです。
プロジェクトの検討事項として、第1にCadeoの町は平らです。平野にどう緑をデザインするか、第2に敷地は川に面していて、水辺の植物が境界際まで来ています。この条件の違う2種類の緑を分断しないようにお互い同士が溶け込むような植栽計画を施しました。彫刻たちはミステリアスに見え隠れし、川沿いの既存の木々の陰から突然姿を現します。狼や鹿の顔をもつ人像が謎めいた存在なのです。彫刻たちが美術館のように陳列展示されないことで、自由に自然や影と共に出現するでしょう。
川沿いの境界は水辺植生の茂みを厚くして敷地の境界がわからないよう、どこまでも広がっている錯覚を与えるようフィルターをかけました。
芝生の広がる中央にはシンプルな長方形のプール、安心感のある明るさ「光」と周囲のミステリアスさ「陰」、また人工的なジオメトリックなラインと周囲の有機的な自然形との対比を見せています。
この計画は地域の自然環境に配慮しながら、クライアントのアートコレクションとの融合も叶えた作品と言えます。」


クラシックなイタリアンガーデンは彫刻も生垣の緑も整然と静かに、庭を鑑賞する時も静かにしなければならない雰囲気があります。
この庭では出没するアートに驚き、時間と共に変わる光と影を追いかけ、楽しさとちょっとしたミステリーも兼ね備えた動の空間でもあります。
夕刻に、だんだんと暗くなる中で、ライトアップされたアートや木々の影、風に揺れる葉の音、近くに聞こえる水の音・・・ちょっと背中がぞくっとする感じが伝わってきたでしょうか?
ここに住むご家族は、四季を通じて、色々なシーン、音、アートの存在感を感じながら生活しているのでしょう。
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Arch.Anna Scaravella,La ringrazio molto per l’intervista.
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★La Casa nella prateria 草原の中の家★

前回ご紹介した雑誌記事 Tra rigore e spontaneita’「厳しい環境と自生植物」のデザイナーである
Anna Scalavella(アンナ・スカラヴェッラ氏)に取材できました。
彼女は自身の作品を一冊の本にまとめており、今回の作品も含めいくつかの物件について快く取材を引き受けてくれました。
Dal paesaggio al giardino –idea,progetto,realizzazione-
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Piacenza(ピアチェンツィア)の週末を過ごす別荘の持ち主は建築家ご夫婦+娘1人、普段はミラノで暮らしています。ピアチェンツィアはエミリアロマーニャ州に位置しています。ここはVal Luretta(ルレッタ渓谷)の自然に包まれた場所、そろそろ春ですね。眠っていた落葉樹や自生植物が徐々に息吹きはじめる季節です。
またの機会に春爛漫の美しい写真を見せて頂けるとのこと、デザインコンセプトであるこの場所の風景に溶け込む様子、山からの緑が繋がる様子、そして自生植物による風景の持続を楽しみにしたいと思います。
荒れたそのままの自然、ではなく、自然の美しい四季を繰り返すための庭づくり、家=建築=人間に近づくにつれて多少なりのメンテの必要な計画をし、山へ、丘へ向かうにつれて自然の力に任せる計画をしています。

■美しい渓谷の風景に佇む別荘は木とガラス、シンプルな造り、風景に溶け込むようにデザインされています
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彼女が自身の本の中で語る内容を抜粋しました。
非常に誌的で、上手に訳せているか・・・定かではありませんが、私なりの解釈で(笑)

■Il paesaggio(風景)
この地はどこが緑のはじまりで、どこが終わりか理解できない雄大な場所である。草原の中に刺さるように建築物が存在、でもそれは風景を遮らず、風景の中に溶ける。
木材とガラスでできた箱は透明な壁として風景が通り抜けるのである。
持ち主でもある設計者ご夫婦は「丘に舞い降りるような」家をデザインした。
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■Il progetto(プロジェクト)
現代建築のための草原をつくる、風景の中に家を造る、それはイコール緑、庭、風景の設計である。
純粋に建築につながる緑とは何だろう?たぶん同じように純粋な緑だろう。だから人工ではない、あるがままの自然をデザインした。
自生植物をベースに考えるということは、時間を必要とする。風が、動物が森から種を運ぶ、四季が繰り返す。そして植物にとっての「熟し」に達し、草原の完成である。
冬になれば枯れ、春にまた息吹く。自然の摂理のまま過大なメンテなど必要が無い。
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■Il giardino(庭)
斜面に建つ家から森を見上げ、反対を見下ろすと緑の地平線が見える。家の中にいても緑が繋がっている。
ガーデンの形としてのデザインを我慢して、自然のあるがままを受け入れるデザインとは、野生の自生植物を人間の介入なしで「熟し」の状態、いわゆる植物界の均整がとれている美しさをつくること。
敷地内を森に近い方から3段階に分けて考えた。1段階:森に近い一番高い場所は自生種をそのまま放置、2段階:少し人間の手を加えながらも自然のまま、種は撒かず、自然の力で運ばれてくるのを待つ場所、3段階:一番低い場所、家の前は芝生を敷く、手を加えるエリアとした。その結果、風景が森から家に至るまで緩やかな3つの変化をガラス越しに見せることになる。
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「この場所に既に成長して根付いている樹木や植物と、これから植える新しい植物が共生できるデザインを目指しました。視線上で繋がる緑の連続ですが、お互いの浸食を避けるために、コンクリートのシンプルな花壇でエリア分けしました。これが非常に大事だったと思っています。」

アンナ・スカラヴェッラ氏は以前住んでいたミラノから自然豊かなピアツェンツィアに移住しました。
現在は住居兼スタジオで仕事をしています。
農家を改造した家が多く、ここも昔は玄関前の大きな納屋、ポーチだったようです。
気持ちよい空気に包まれたオープンエアーのスタジオ、その地の植生を知り、自然をデザインする彼女に最適な空間です。
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Anna Scaravella - Landscape Designer
http://www.annascaravella.com/index.php

雑誌の記事での解釈とは少し違う印象もあったりと、デザイナー本人への取材は本当に楽しいものです。
この場を借りてご協力を感謝したいと思います。
とてもハンサムウーマンな彼女の今後の作品も楽しみです。

次回も引き続き、彼女の作品を取材します。
お楽しみに。
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★恒例・・・イタリアのガーデン雑誌「gardenia ガルデニア」2013年10月号より★

Tra rigore e spontaneita’~厳しい環境と自生植物~
環境に適した自生植物を中心に配色された風景の一部になる屋根緑化事例の記事をご紹介します。
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Piacenza(ピアチェンツィア:ミラノより南に70㎞ほど)の郊外、なだらかな丘に建つこの別荘は、驚くべき透明な家、大きなガラス面で内と外が繋がっているように見せています。もう一つの特徴は屋上緑化された大屋根ですが、施工後、灌水設備を設置しないまま15年が経ち、セダム類など強健な種類だけが生き残っている状況でした。クライアントはそのような一定の種類に浸食されたような、残念な姿に成り果ててしまった屋根緑化をやり直すべく、2011年ランドスケープデザイナーのAnna Scaravella氏がこの困難なリフォームにチャレンジしました。自然の生命力に対立せず、住まいの近くにどう植物を共生できるか?この土地に自生する植物種類をベースに検討を進めました。
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山の方に向かって縦長の敷地は緩やかな斜面、その中間地に建築があります。敷地の上方には木が茂る森、その中に車道が面しており、住人は上方からアクセスする造りです。そのあたりに植えられた木々、植物はこの地に合わなかったのか、発育不良気味のようです。
建物に近い場所には芝生が敷かれていましたが、今回Scavella氏は芝生と植栽地の間にコンクリートの仕切り(H400)を設け、植物がお互いの浸食を防ぐようにした上で、囲まれて花壇となった部分に堆肥を加え、軽い畝を作りました。仕切りによって芝生地と草地(自生種)を分割することで、両方とも浸食しあうことなく、共存できるのです。
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風や動物、鳥や水の流れによって森から植物の種が運ばれ、1年も経たないうちに春・・・ここは草原のように爽やかな緑で覆われます。色とりどりのワイルドフラワーが繁茂するのです。夏になれば、一面黄色の花で絨毯のようになるでしょう。
時間の経過により、ここは極相(クライマックス:生物群における平衡状態)になり安定します。

周辺の大きな緑に融合し、植生をつなぎ、自然と共に暮らす家、数年後の姿が楽しみですね。
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Anna Scaravella - Landscape Designer
http://www.annascaravella.com/index.htm
アンナ・スカラベッラ氏のホームページです。
プロフィールを拝見、在伊日本人建築家とのコラボレーションもあり、興味深いランドスケープデザイナーです。
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