Villa Ormond 日本庭園リニューアル(トリノ郊外の事務所vol.02)

熱海市の姉妹都市SanremoにあるVilla Ormond日本庭園リニューアル

前回に引き続き、フランチェスコ氏が牧岡氏、増井氏と共に造り上げた日本庭園プロジェクトをご紹介します。
Villa Ormondの日本庭園は元々イタリアのSanremo(サンレーモ)と日本の熱海市が姉妹都市提携(1976年)の一環として1991年に作庭されましたが、ここ十数年間はメンテナンスもなく放置された状態が続いていました。
過去にサンレモ観光局が熱海を訪れ、景色が似ていると言ったことが発端、海に面した風景や気候に加え花市場、音楽祭など共通点が多いことも提携に結びついたそうです。サンレモに日本庭園、熱海にイタリアンガーデンというガーデン交換計画が実現したのです。

Sanremo(サンレーモ)公式HP
http://www.comunedisanremo.it/
フランス国境に近いリグーリア州(地中海に面する)の自治体、1951年から続く「サンレモ音楽祭」や自転車ロードレースのゴール地として知られています。生花の産地としても有名です。

フランチェスコ氏
「当時、熱海市から歴史ある日本庭園のプランをいくつか頂いたようです。日本庭園の手法をベースに滝や池をつくり竹林、桜やモミジ、ソテツなどを多く配しました。しかし時が経つと共にメンテナンスを怠り、竹はそこらじゅうに蔓延り、滝は見る影もなく、植物たちは枯れ果ててしまいました。トリノ大学で教鞭を取りはじめてから単発でサンレモでも講義をするようになった私は、この悲惨になってしまった日本庭園を何とかしたいと思い、2009年より講義の合間を縫って庭園の掃除、伐採作業を始めました…市役所の職人さんたちもかなり協力してくれ、時には生徒たちも手伝い(とてもいい勉強になりますし)、我々は蔓延った竹林を伐採し、滝を修復しました。全てボランティア、無償でしたので新しい材料は使えず、そこにあるものだけで修復を試みたのです。スケッチでは滝の右側の大きなビャクシンは3段造り、ゴヨウマツ仕立てにしようと考えていたのですが、剪定しているうちに亀の甲羅を思いつき、大刈込を施しました。」


★枯れ果ててしまった池泉庭園の様子と修復するためのイメージスケッチ
このスケッチに基づいて伐採整理をスタートしました
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★亀の甲羅に見立てたビャクシンの大刈込、2009年→2010年の剪定の変化がわかります
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延びきった植物で覆われて姿が見えなくなってしまった滝、フランチェスコ氏たちの伐採整理によって姿を見せました。しかしその滝の上部はコンクリートがむき出し、給水口はほぼ詰まって塞がれていた状態だったと言います。時間をかけ、周囲の協力のもと、彼らは石組をし直し、滝の景を修復しました。淀んでいた池も清掃からはじめ、フランチェスコ氏自身が持参した舟形石が新たに加わりました。

★剪定後、姿を現した滝の上部の状態と石組工事の様子
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★完成した様子、舟形石が池泉庭園に色を添えました
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フランチェスコ氏
「滝と池が完成してから1年ほど経過した2011年、サンレーモで盆栽会議が開催されることになり、これまで作庭したことのない枯山水庭園をつくることに!私は牧岡先生と増井さんに協力を仰ぎました。枯山水のデザインは私と牧岡先生と2人の手で進めました。私のアイデアは鶴島をもつ枯山水、対になる亀島はそれまで修復を重ねてきた滝の刈込、亀の甲羅を模ったビャクシンです。」

★フランチェスコ氏のアイデアと計画プラン
当初は枯山水庭園の中に入れるようなイメージで、蹲に触れ、座に腰かけて鶴島を眺め、鶴島を通して亀島を見るというストーリーで描いたプラン
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★施工開始日の前日、打合せの中で牧岡氏がその場で描いたプラン
美しい竹林を伴う枯山水は眺める庭として人が入るべきではない。ここは船着き場をイメージしたらどうか・・・と。何故ならここはサンレーモと熱海の姉妹都市であることを大切に思うべき場所、両市の海の止場という共通項を意識し、枯山水は「水」であるべきだ。さらに後ろに控える水景とつながる川の役割も担う。
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フランチェスコ氏
「プロジェクトはワークショップとしてトリノ大学とサンレモ市の提携で進められました。デザインは私のアイデアをベースに、上記のように重要な変更点がありました。また特徴として枯山水の池の中で犬や猫、カモメを遊ばせるように岩を配する風景を造りこみました。これは高台寺の鳥獣人物戯画をイメージしています。動物たちの走り、遊ぶ姿を表現するというものです。“物真似”の手法により、岩を動きがあるように配置し、動物たちを想像させます。牧岡先生が初めてこの地に足を踏み入れた時、実際に猫や犬、カモメが遊んだり喧嘩したりしている姿を見て戯画を思いついたのです。サンレーモの人々がここに餌を持ち込むようで、たくさんの野良動物が集まってしまうようでしたが(笑)。」

高台寺の「鳥獣人物戯画」は以下のHPの中に詳しい説明があります。
http://www.kosanji.com/chojujinbutsugiga.html
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★枯山水施工の様子
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フランチェスコ氏
「牧岡先生と増井氏の指導の下、施工の3日間は大変厳しい仕事でしたが、私にとっても多くの学生にとっても有意義且つとても濃い時間でした。
このプロジェクトは東日本大震災の起こる数か月前に立上り、日本が大変な時期に施工しました。ですから復興を願ってのプロジェクトと言う気持ちが強くありました。」


★枯山水の中心に位置する鶴島と全景です
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★枯山水を見下ろす大刈込(この地にあう植物で構成)
これは先生の考案によるもの、大刈込の間を川を見立てて石を配しています。また池泉庭園より枯山水を臨むと、亀島と鶴島、水の繋がりが伝わってきます
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2011年4月1日に日本領事参加のもと落成式を行いました。快晴の枯山水庭園に再び動物たちが遊びに来ました。
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取材を経て、サンレーモと熱海市が姉妹都市と知り、音楽祭で有名な地に日本庭園が存在することを知りました。ヴィラ オルモンドは地中海の植物、ヤシ類や色彩豊かな花で溢れた植物園的なガーデンがあり、その奥に静かな枯山水と池泉庭園が広がります。メンテナンスの難しさもありますが、年月が経っても美しさを保ち続けてほしいと願います。

日本の庭園学を学び続け、イタリア国内で発信をするフランチェスコ氏のますます活躍する姿を取材できたらと思います。と同時に、自分自身、日本庭園についての知識の少なさについて反省しなければなりません。

Grazie infinite a te Francesco Merlo per l’intervista molto interessa.
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by ciaosae | 2015-02-26 16:42 | LAVORO(仕事) | Trackback | Comments(0)
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